うちのトコでは(四国四兄弟) 朴葉味噌かつ+ばな奈サブレ





昼休みが終わって会議室に帰る途中、ホールのソファに岐阜達が積み重なった山が出来ていて、東京都と神奈川は思わずぎょっとして立ち止まった。
「おい、岐阜ってあんなにいっぱい居たか?」
「少なくとも今日はそんなに……ああ、よく見てください」
岐阜の山の隙間から、グレーのおさげがはみ出ていた。更に、岐阜達の「ぎふーぎふー」という鳴き声に混ざって「しろくろまっちゃ、あがりコーヒーゆずさくら♪」と上機嫌に口ずさむ声が聞こえる。
「愛知に群がってたのか」
「みたいですね。っていうかあの人…」
少し角度を変えると、ういろうの箱を膝に乗せて、切り分けたそばから群がる岐阜達に分け与えてる愛知の姿が見えた。
「食後のデザートにしたって、普通ういろうを箱で持って来ますか。しかもあの米粉でずっしりのを」
「最初から岐阜達と分けるつもりで持ってきてんだろ?あいつら仲良いし」
分け与える、というのが小皿に分けるものではなく、いわゆる「あーん」で食べさせているあたりに仲の良さが垣間見える。というか、岐阜がマスコットみたいな頭身だから「仲が良い」で済んでいるのであって、もし普通の体格だったら更にぎょっとする光景である。

特に意味もなく、立ち止まったついでに少し遠めに眺めていると、ある程度食べて気が済んだのか数名の岐阜は愛知から離れ会議室へもどって行った。するとソファの人口密度が少し減り、岐阜まみれだった愛知の全身が見えるようになる。
餌付け(?)の時間が終わったのかと二人が思っていると、愛知の腕にしがみついていた岐阜の一人が愛知のネクタイをくいくいと引っ張った。相変わらず「ぎふー」と言ってるようにしか聞こえないが、愛知はそれで岐阜が何を言わんとしているか分かったらしい。少し照れたように笑んでから岐阜を両腕に抱え直し――
唇を重ね合わせた。
眺めていた二人のそばでだけピシリと空気が凍ったことを知る由もなく、愛知と岐阜はにこーっと笑い合ってから身辺を片付け始めた。

少しの間沈黙が落ちて後、東京が口を開く。
「神奈川さん、神奈川さん」
「……おう」
「今のはやおいですか、百合ですか」
「なんでその二択なんだよ」
「ノマカプなら男の顔が見えてないほうがベターです」
「このエロゲ脳め」
腐ってやがる遅すぎたんだ、と思いながら神奈川は東京の顔を観察する。目はやや血走り隈はべったりとはりつき、顔色は全体的に悪い。いつものこととはいえ、疲れているらしい。東京のオタクスイッチが入るのは大抵疲労が限界近くまで蓄積したときなのだ。
「疲れてるのは分かった。午後の議長は俺にまかせてちょっと休んどけ」
ソファの方向を見つめたまま動かない東京の腕から書類の詰まった鞄をもぎ取り、神奈川は東京の腕を引っ張って会議室へ向かう。
午後の会議が始まるのはもうすぐだ。






口調がほぼ標準語の方々は話の進行役で出すのがラクで良いですね。オタクスイッチ入った東京の言はSKYの代弁だってのはここだけの秘密。