02:木乃伊
封神 雲乙





昔々、白衣の王子様を名乗る男がおりました。
彼の友達に、黒衣の姫君と呼ばれる人がおりました。



「君、実は馬鹿だろう」
一週間かけて引き上げた崑崙2の修理をしていた太乙に、雲中子が言った。
「え、なんだって?」
手を止めて、太乙が訊きかえした。ガビガビガビという耳障りな音が止む。
「太乙は頭がいいフリをして、本当は馬鹿だ、と言ってるんだよ」
「な、何を唐突に・・・」
「唐突なんかじゃないさ」
雲中子は足元にあった2枚の巻物を拾って、
「これは何だい?」
「新しい崑崙2の設計図だけど」
「この『崑崙2』より『新崑崙2』の方が余計なものが増えてるのは、私の気のせいかな?」
確かに、2枚ある設計図のうち、太乙の筆跡でごていねいにも太字で『新崑崙2』と書かれた方は、もう片方のよりずっと線が多く細かい字で書かれていて、図面はほぼ真っ黒になっている。機械型宝貝は専門外なこの生物学者にも、新しい方には大砲が2つついていてサイズも従来の2倍近くなっていることくらい分かった。
「君がミイラになってぶっ倒れたのは何でだったかなぁ?」
「私が崑崙2を動かすには荷が勝ちすぎていて、エネルギーを吸い取られすぎてしまったから…」
心なしか太乙の声が尻すぼみになる。
「じゃあなんで、エネルギーを根こそぎ吸い取られるハメになったのかなぁ?」
「崑崙2は複雑で扱いが難しすぎて、私にしか動かせなかったからです・・・」
ますます声は小さくなる。
「改めて訊くよ。これは何かな?」
どことなく意地の悪い笑みを浮かべて雲中子が掲げるのは例の図面。
「ごめんなさいすいません私が悪うございました今からすぐに書きなおすので許してください」

「別にねぇ、太乙、君が無理をして倒れようと間抜けにも過労死して封神されようとも私自身は別に困らないんだよ。」
「その言い方酷くない?」
「そうかい? 君が望むのなら生きるのに飽いて、それか戦に嫌気が差してさっさと封神台<あちら>で道徳達と仲良くやってればいい。死なないナタクや封神事業を進めなきゃいけない他の皆を残して」
「うっ・・・」
親馬鹿で知られる太乙は、ナタクのことを出されると弱い。
「でもそれは嫌なんだろう?だからこうして生きて働いている。それでも命を縮めるようなことをするなら・・・そうだなぁ、今度倒れたときには私が自ら口移しで仙桃エキスを投与しようか」
「げ・・・本気ですか雲中子さん」
「勿論。気を失ったら自分で飲み込むことが出来ないじゃないか。遙か西方の御伽噺のように、死に掛けた姫に口づけしたらすぐに目覚めてもらえるかもしれないしねぇ」
「まさか王子様を気取る気?君がぁ?」
「良いじゃないか、白衣の王子様。黒衣の姫君をやさしく起こしてあげるよ。それじゃ満足できないなら、依存性抜群の仙桃エキスNEOを使うのもいいねぇ」
雲中子がニヤァ、と笑う。
「・・・そんなことにならないように善処させていただきます」
冷や汗をかきつつ設計に取り組む様子を見て、彼に聞えないようにように雲中子はぽつりとつぶやく。



姫君<きみ>を生かすためならば、私は王子にも道化にもなろう。






ミイラ=太乙の思考回路はいいとしても(いいのか)、問題にすべきは性格大量捏造疑惑。雲さんメインで何か書こうと思うと、おかしくなるorz
別にそんなつもりではなかったけど、必要以上に雲乙。自分で考えておいてなんですが、王子と姫ってねぇ・・・