07:侵入者
封神 聞仲・張奎・趙公明





はじめまして。僕、張奎です。「童顔」だとか「役人に見えない」とか言われたり言われてなかったりしますが、これでもメンチ城城主及び太師秘書官やってます。僕はこの仕事に誇りを持ってます。
でもそれは世を忍ぶ仮の姿!その実体は!殷国太師聞仲様親衛隊(非公認)の人間界支部長なのです!本当は『親衛隊長』名乗りたいだなんて、四聖や黒麒麟さんには秘密です。

親衛隊隊員を地道に増やす活動をしつつ、僕は今日も今日とて秘書の仕事をやってます。
我らが聞太師は、ばりばりと音がするほど一生懸命書簡の山を片しています。さすがは聞仲さまです。どんどん書簡が運ばれてきても、それより早く仕事をこなしていく様は見ていて惚れ惚れします。

日もだんだん高くなってきて、暇のある部署だと朝の休憩を入れているころ、窓から客がやってきました。趙公明です。色とりどりの風船を大量につけた籠に乗って、心なしか豪華な音楽までお供につけて彼はやってきました。
「やあ聞仲君!ご機嫌うるわしゅう!仕事の息抜きにモーニングティーはどうだい?」
閉まっている窓をノックしながら彼は言いました。既にティーポットが手元に用意してあります。
「断る。遠征帰りで書類がたまってるからな」
真面目な聞仲さまは一刀両断に公明を斬捨てました。僕も「聞仲君の代わりに」と彼のお茶会に誘われたことがあるのですが、彼はひたすら喋り続けていて、いつまでもお開きになりませんでした。聞仲さまが断るのももっともです。
「西方からはるばる取り寄せた貴重な茶葉があるんだ。ぜひ君にも――」
「同じことは言わん。さっさと退け」
「根を詰めると美容にも良くないよ。聞仲の美貌が失われては僕も心苦しい」
「……。」
聞仲さまは無言で席を立ち、窓に手をかけました。僕は聞仲さまが誘いに乗ったかと思って驚いてしまいました。
「おお!誘いに応じてくれるなんて150年ぶりじゃないかい?さあ一緒に優雅な朝――」
ばばばばばばばん!!!
眼にもとまらぬ速さで聞仲さまは禁鞭を抜き、公明の籠の風船を片っ端から叩き割りました。文武両道なのは聞仲さまの魅力の一つです。
どうやって避けたのか、顔には傷一つつかないまま、公明はかごと共に落ちてゆきました。
「今度は是非ともアフタヌーンティーに誘いに来るよー!!」
「来るな!」
聞仲さまは窓の外に一喝して、また席に戻りました。心なしか彼が来る前よりやつれているような気がします。そして元の作業に戻る前に、僕の方を向いて、
「この書簡が片付いたら一服しようか」
と仰いました。僕は喜んで賛成し、夢見心地でそのひと時を過ごしました。

やっぱり僕は聞仲さまが大好きです。






易姓革命が起きるずっと前の太師府の日常という設定です。だから張奎くんイメチェン前。
趙公明が酷い扱いなのも、愛です。
い、今単行本読み返したら、仕事部屋って窓ないっすね・・・ 広々縁側あるじゃんよ。仮眠室で仕事してると思ってください。