16:衝動
封神 飛虎聞





飛虎の目の前に見えるのは白く細いうなじ。
揺れる金糸の髪。
といっても女のではない。
聞仲が後ろ髪を高めに括って仕事をしていた。
何故聞仲が髪を長くしているのかは知らないが、夏場にも外套を着込んでいるのを見れば、どうせ「武人として他人に急所を曝すのが嫌だから」とかそんな理由だろう、と飛虎は思う。
そんな彼がこのような姿を見せるのは飛虎の前だけである。
それがとても嬉しく思える。
つれなかった野良猫が頬をすりよせてきたようで。

聞仲の耳に聞こえるのは、二人分の息遣い。
沈黙の中にある安心感。
会話は無いが、飛虎が居るというだけで、落ち着ける場所がそこに在った。
これが少し―道士である聞仲の尺度で『少し』だが―前までは、飛虎の一方的な喚きとも喋りともつかない声で満たされていて、その度に聞仲は邪魔をするなと怒鳴っていた。
その頃を思い出すと、今の状況を聞仲は嬉しく思える。
しつけの悪い子犬がやっと『待て』を覚えたようで。

ふと、お互いに抱き締めたりもっと傍に寄りたい衝動に駆られるけど、ぐっとこらえる。
相手がもっと懐いてくるまで、もう少し、もう少し……。






相手を犬猫に例えるあたりでほのぼの感をだそうとして、見事玉砕。
ってかこれシリアスっぽくない?(全然そのつもりはなかった)
もうちょっとふくらましたかったなー…。いつかリベンジ!