23:大バサミ
封神 ナタク+趙公明





封神台解放後、ナタクは困っていた。
「ナタク君!金蛟剪のトレビアーンな使い方を知りたいとは思わないかい?」
他の魂が封神台に帰った後にも、趙公明がずっとつきまとってきたのだ。しかもよりによってナタクが一番嫌いなタイプの男であったりする。
「スーパー宝貝をワンダフォーにビューティフォーに使いこなす方法を伝授してあげるよ!」
「要らん。失せろ」
「はっはっはっはっ!僕は君が僕の遺品を使ってくれているのがとても嬉しいんだ!あのあと誰にも拾われなかったら僕のスーパー宝貝が泣くだろう!」
「失せろといっている。人の話を聞け」
しかしそれはとうてい無理な話で。趙公明はひたすら喋り続ける。ナタクには理解できない単語を連発しながら喋り続ける。ナタクが無視して飛んでいても霊体だからどこまでもついてくるし、攻撃しても上手くかわされる。こんなに煩い背後霊も居ないんじゃないかとナタクは思う。いや、奴が執着してるのは宝貝の方にだから、背後霊とは言わないのか。自分の生みの親以外に、こんなに宝貝に執着する奴を、他には知らない。

いい加減うんざりして、最終手段「太乙に泣きつく」を実行しようかと思った矢先、不意に公明の言葉がナタクの心をとらえた。
「さらに強く!さらなる高みへ!!」
「・・・本当に強くなれるのか?」
「やっと話を聞いてくれたんだね!」
「ごたくはいい。さっさと教えろ」
「そうだね!君の気が変わらないうちに。さあこっちへ来たまえ!」

そういわれて連れてこられたのは、趙公明駅。一面に薔薇が咲き誇っている。
「ここで何をするんだ」
「戦いには頭脳も要るということを教えようと思ってね!さあ金蛟剪を貸してくれないかい」
なんとなく嫌な予感がしつつも、ナタクはしぶしぶそれを貸した。
「金蛟剪趙公明バージョンレインボースペシャルセカンドステージ!!」
公明が叫ぶと、金蛟剪から七色の虹が出て竜になった。そしてその竜がそれぞれヤマタノオロチの如く頭が8つに割れ、その頭もそれぞれ細かく割れ、メドゥーサの頭のようになった竜が、薔薇園を這いまわった。一気に七色の光が一帯を埋め尽くす。

しばらくして光がスゥゥ・・・とひくと、そこには、
「見たかい?この華麗なる僕の美技を!」
見事に剪定された薔薇が。スーパー宝貝の威力か、全ての薔薇が公明と同じキラキラしたオーラをまとっている。正直、鬱陶しいほどまぶしい。
「完璧に手入れされた花ほど美しいものは無いよ!ナタク君、君も是非この技を身に付けガーデニングをしてみる気は――ガフッ」
この男に何かを期待した自分が馬鹿だったと思ったナタクは、乾呻圏を趙公明の後頭部あたりにあて、さっさと金蛟剪を取り返して帰った。
魂だから2度も死ななかったものの、どこか満ち足りた顔で倒れている趙公明が封神台管理人の亀に見つかったのはさらにその3日後。



「どうしたのナタク?こんな遅くに帰ってきて」
「なんでもない。ただ少し――悪霊を始末してきただけだ」






いや、趙公明好きですよ?お題07のときも似たような扱いだったけど。
それにしても公明の行動がなかなか意味不明に… おせっかいなのかガーデニング伝道師なのか金蛟剪に憑いた怨霊なのか。