045:masochism バサラ 政小 ※018:dutyと同じ設定(吸血鬼政宗・執事小十郎)なのでそっち先に読んだもらったほうがわかりやすいかも 熱帯夜の中夢を見る。 館に唯一住まう人間の首を食い千切る夢を。 俺は人間の血を吸い尽くせるほど大食漢ではないことをそこで思い出して、これは夢だと夢の中で自覚する。 これは夢、もしくは願望だ。 灼かれるような暑さの中夢を見る。 館に唯一住まう執事の心ノ臓を食い破る夢を。 この犬歯など殆ど飾りだ。人の胸を食い破る胆力など俺にあるものか。碌に同属も増やせないくせに。 だからこれは夢だと、夢の中で自覚する。 これは夢、もしくは願望だ。 蒸されるような部屋で夢を見る。 館に唯一住まう刻に縛られた者の腕を啜る夢を。 腕のどこに太い血管が流れているかも知らないのにそこから生命力を得ているのだ。 だからこれは夢だと、夢の中で自覚する。 これは夢、もしくは願望だ。 熱に魘されながら夢を見る。 館に住まう最も愛する人間の脚を舐める夢を。 寝所を襲い銀のナイフで膝の裏を丁寧に斬る。溢れ出したいのちのながれを一粒も零さないよう、丹念に慈しむように嘗め尽くして、体に熱と活力が漲るのを実感する。 だからこれは――これは夢ではない。 「まさむねさま、なにをなさっておいでですか」 寝起きゆえのの甘さを含みながら退くことの出来ぬ状況に詰まった声が政宗の頭上から響く。 「おまえと、ひとつになろうとおもって」 夢に浮かされたまま政宗は答える。夢に漂う吸血鬼は、言わんとすることと聞こうとする側の齟齬など考えない。 「さようですか。ならばねむったままくろうてくだされ。それがおれのさいごのわがままです」 真夜中だからか血を失ったからか、小十郎はそのまま瞼を下ろそうとする。 意識が虚ろなまま吐かれた被虐的な台詞に政宗は体の中心をぞわりと沸騰させた。更に上がった熱に浮かされたまま、言葉を紡ぐ。 「だいじょうぶだ、いのちはけっしてとらないから。だからおとなしくくわれてくれ」 唾液で血を止めて、声が融ける。 それらはすべてゆめとうつつのあわいのできごと。 「masochism:マゾヒズム・被虐趣味」 奇しくもSが小政でMが政小になったけど対比にするつもりはさっぱりありませんでした。つーか対比にさせるつもりだったら両方とも政宗様が襲ってるような事態にしない…。 よく考えたら、うちの政宗様すごい夢見がちだ。 |