バサラ 政小
※転生パロ
※ぬるいし短いけどゆるくR-15





突然だが、俺には前世の記憶がある。

まあこういうことを他所で言えば、漫画の読み過ぎだとか頭がイカレてるだとか言われるから誰にも行ったことはないんだが。
前世の記憶ってのは、大抵は夢を通して断片的に思い出す。
夢の中で俺は『伊達政宗』と名乗る戦国時代の隻眼の武将で、自分でも信じられないことだが刀を6本振り回して戦場を駆け回っていた。俺がその信じられないような夢を空想ではなく「前世」だと断言するのは、その夢の中では刀を握る感触もけぶるような血の匂いも湧き上がる鬨の声もはっきりと感じられて、その圧倒感に飲まれて目が覚めたときに一瞬今いる場所と時間が分からなくなるくらいだからだ。行った事も経験したこともないあの情景をただの夢や妄想として片付けるには、あまりにもリアリティがありすぎた。
ただ偶に「これは妄想なのかもしれない」とちらりと思うのは、夢の中の俺と今の俺は似ても似つかないというところだった。今の俺は両目揃っているし、顔も声も身体も名前も、共通するところを探す方が難しい。性別くらいか?あと、夢の中の俺が楽しそうに刀を振るうのが羨ましくて剣道を始めたから、竹刀だこがあるとくらいは一緒かもしれない。

断片的に増えていく前世の記憶はほとんど戦場のものばかりだ。年がら年中ひっきりなしに戦ってたわけでもないはずなのにそんな記憶ばっかり増えていくということは、前世の余程いくさが好きだったらしい。今の俺も竹刀を握れば血潮が滾る思いがするから他人事のようには言えないんだけど。
その記憶の中では常に俺の死角に立つ男が居る。死角だから僅かにしか顔は見えないが、「政宗様」と俺を呼ぶ声と気迫、時折ひらりと視界に入る鳶色の陣羽織が鮮烈に心に焼きついている。あいつが今でも傍に居てくれれば、この記憶の欠片達が妄想なんかじゃないと確信できるのに。
小十郎に、会いたい。



そんな中、久しぶりに戦場以外の夢を見た。

涙に濡れた瞳。敷布に散った少し長めの髪。厚い筋肉に覆われた裸の胸。真正面からしっかり顔を見るのは初めてだけど、熱で蕩けきった声で「まさむねさま」と呼ばう声は、確かに小十郎のものだった。
挿れたモノを揺さぶれば、開いた口から耐えきれないように甘い溜め息が漏れ、それが俺の脳髄を直に痺れさせる。
俺が「小十郎」と呼べば垂れた眦が幸せそうに緩んで、それだけで俺も胸がいっぱいになった。
思わず口づければその合間合間に淫靡な息が漏れ、それに煽られて本能のままに腰を突き動かす。
そして、耐えきれなくなった小十郎がぎゅうと目を瞑り――

――目が覚めた。
思わず長い溜息をつかずにはいられなかった。よりによって、あの場面か。俺とあいつが、まあ、いわゆる情人だとかLoverだとかそういうもんだというのはぼんやりと覚えていたが、今生ではたかだか15,6年しか生きてない身としては少々…いや、だいぶ刺激が強い。
恐る恐る股間を確認してみれば、奇跡的にも失態は犯してなかったものの、息子は元気にいきり勃っていた。
少々の罪悪感を抱きながらも小十郎のあの顔をオカズに抜いてから洗面所に向かうと。

鏡の中に居る小十郎と目があった。

「うわあああああああ?!」
盛大に叫んでから思い切り後ずさる。居間から親が何か言う声が聞こえたが、殆ど耳に入ってこなかった。
おそるおそるもう一回鏡を見る。生まれてこの方ずっと付き合ってきた俺の顔がある。『伊達政宗』とは似ても似つかない顔。それは、『小十郎』を10歳以上若くしたような顔だった。
吊った眉に垂れた眦、その眼窩には、瞳孔が縦に割れた龍眼ではなく、意志の強そうな飴色の瞳が収まっている。そろそろ切らなきゃと思っていた髪は毛先だけ外に跳ねていて。流石に頬傷はないが、前髪を掻き上げ眉を顰めてみれば、より一層小十郎にそっくりになった。確かに前々から、我ながらイケメンの類だとは思っていたが、これは…
「Holy shit!マジかよ…」
呟く声も声変りが終わり切っていないためにガキ臭さが残るが、声質は確かに俺の名を呼ぶあの声とよく似ていた。むしろなんで今まで気づかなかったってくらいに。
再び長く溜め息を吐いてから、しゃがみこむ。特に今はヌいた相手の顔が鏡の向こうから見つめてくるのが物凄くいたたまれない。というか好いた相手の顔でこれから過ごしていくというのも、いたたまれない。
そうやって俺は、洗面所を使う姉貴に蹴飛ばされるまで鏡の前で蹲っていた。






1度やってみたかった「容姿変更系転生パロ」。
この後同級生になった佐助に「その顔でそうやって笑うとマジで悪人にしか見えないよ」って嫌そうに言われるとこまで書きたかったけど、暫定喜多姉さんに蹴飛ばされてオチがついたのでここまで。
pixivで続き待機されたのでおまけがつづきました→おまけ集