ヘタリア 封神  聞仲+にーに
※クロスオーバー注意!
コレの続きです





聞仲が件の子供に再び会ったのは、初めての邂逅から十を超える春を迎えた頃だった。人間なら子供から青年になるに充分な歳月が過ぎたはずなのに、その子供はあの時から微塵も変わった様子がなかったことで聞仲は妙な安堵を覚えた。
「また会ったな、子供」
「『また』…?ああ!あんた、前に会ったえらい役人あるか!」
「私の名前は聞仲だ。そう言えばお前の名前を聞いてなかったな。『殷』…でいいのか?」
「今の王朝の名前がそうならそうあるが、誰に言っても信じてもらえなかったからこの名前で通してるある」
言いながら子供は地面に小石で『王耀』と書いた。
「耀か、良い名だ」
「あんた、驚かないあるな」
「驚く?ああ、お前が『国』であることか」
草花や物が時を経て妖怪仙人になるのだから大地が目の前に人の形をとっていてもおかしくないと思った。理由としてはそれだけだった。しかし妖怪仙人はあまり多く人間界<こちら>にはいないからこの子供は会ったことがないだろうし、あちらのことをこちらの者に教えるのは望ましくないとも考えていた。
「…やっぱあんた変な奴ある」
「歳をとらない子供には言われたくないな」
「フン」

「――お前、約束守ってねえあるな」
「まだ体が痛むのか」
「そうある」
「近年国境付近での攻防が続いているからか。申し訳ないが殷の民を護る為だ。そういえばお前は例えば王朝が変わったら――私がそんなことさせないが――そうなったらお前は死ぬのか」
「『夏』はいつのまにか終わってたあるから、『殷』が終わっても我は消えないと思うある」
「そうか」
「でも痛いのは嫌ある。なんでお前たちは戦ばっかりするあるか」
真っ当な、そして率直過ぎて痛い問いに聞仲は顔を顰めた。
「それは難しい質問だな……」
「ずっとえらい役人やってるのにわかんねーあるか」
聞仲は暫し逡巡し、経験から推測する自分なりの答えを話す。子供には、それがずっと年上の『国』であってもあまり聞かせたくない内容だった。
「世を乱すためだけに戦を唆す輩もいる、一族や民族の繁栄のために戦う者もいる、私は護るために戦っている。何故ならそれが私の使命だと思っているし生き甲斐だからだ」
「ふぅん…」
「極論を言ってしまえば全て自己満足のため、かもしれないな。――軽蔑するか、人間を」
耀は外見に似合わぬ大人びた大きな溜息をつき、苦笑を向けた。
「人間を、国民を嫌いになれたら『国』なんてやってらんねーある」
「それはまた……難儀だな」
「そうでもねーある。子供がいくら暴れたって、親は子を憎んだりしないのと同じある」
「子供、か」
聞仲は血をひく子を持ったことはないが、殷を我が子と同じように愛していた。殷であるこの子供は国民を、それはきっと聞仲を含むこの国の民を憎めないと言う。それはやはり不思議な邂逅と言えた。
「耀、お前は他の『国』と出会ったことはないのだな?」
「そうある」
「寂しくはないか、同じ時を過ごせる者がいなくて」
「……」
寂しくないはずはないのだ。聞仲が同じ寂しさを抱えているのだから。だから――
「お前が望むなら、また私の所へ来るがいい。私は殷が殷である限りずっと此処に居る。話し相手くらいにはなってやれるぞ」
「……考えとくある」
そっけない返答の割りには、耀の顔には隠しきれない笑みが浮かんでいた。

300年の時を生きる太師と1000年以上の時を生きる子供、本来ならば触れ合わなかったはずのふたりの間で、確かに友情が生まれた。






誰得クロスオーバーと思っていたら反応をいただけたので、すごく遅ればせながら再会編を。
おっさんと子供、みたいな組み合わせは和みだと主張したい。