ジョジョ3部 アヴポル
※生存パラレルでこれの続きっぽいかも





来客を告げるベルが鳴ったのは夕暮れどきだった。20年以上前に立てられたポルナレフの生家にインターホンなんて上等なものがあるはずもなく、宅配の声でもない不審な来客にポルナレフは訝りながらドアを開ける。
「どちらさん?」
「Bonsoir,ポルナレフ。久しぶりだな」
唐突に現れた見知った顔にポルナレフは思いっきりうろたえる。
「えっ、ちょ、なんで?!」
「そこまで驚くことはないだろう」
「だって!エジプトにいるはずのアヴドゥルが!来るなんて思わねえよ!」
「私の仕事エリアは世界中だ。こちらの方に来る用事があったからな、ついでに寄ってみたんだ。……都合が悪いならホテルに帰るが」
「そんなわけねえじゃん!まあ上がれよ。夕飯はこれからだからアヴドゥルの分も準備するぜ」
ちょっと顔を見に来ただけなんだけどな、とアヴドゥルは笑う。それでも帰る気はないと見て、ポルナレフはこれ以上ないほどの上機嫌で突然の来客を招きいれた。



「事前に言ってくれれば用意できたのに」
なじる台詞に反して、ポルナレフの雰囲気は明るい。
「それは悪かったな」
口では謝りながら、口調に誠意はあまり乗っていない。冗談のようなやりとりでアヴドゥルは心のうちを巧妙に隠す。彼には連絡できなかった理由があった。

空港で分かれてから後、自覚した想いに懸命に整理をつけて、それでも焦がれる心を止められなかった。フランスまで足を伸ばすという一種の強硬手段に出たのは、日課の占いにすら集中力が切れてままならないほどになったからだった。彼の顔を見ればこの禁断症状のような心のざわめきがどうにかなるかと考えての決行であった。
会いたい気持ちと何故か怖く思う気持ちに苛まれ、何度も引き返そうとする足と戦いながら向かい、まっすぐ向かえば昼には到着しているはずのポルナレフの家に着いたのがこの時間だったのだ。
『仕事』という偽りの盾にそういった葛藤を隠さなければ、会えるような心境にはなれなかった。

「俺さ、自分で選んでこっちに戻ってきたけど、毎日『あの旅楽しかったな』って思えるくらいに懐かしいんだ。だからアヴドゥルが来てくれて、すげえ嬉しい」
その声に、笑顔に、雰囲気に、心が大きくざわついた。整理をつけた気持ちなど粉々に砕け散った。ひとときも離れたくない、という欲求が沸き起こる。こんなはずじゃなかった、と後悔すらしたくなる。どうやっても禁断症状は加速こそすれど治まる気配など無かった。
「お前もニューヨークに来ればいいじゃないか。ジョースターさんならいつだって歓迎してくれるぞ」
そうすればもっと一緒に居られる、と口元まで出かかるのを堪える。ポルナレフが肯定の言葉を言わないかと、アヴドゥルは熱すぎる視線までは隠せないでいた。






タイトルはバンプの某曲より。日記に先に上げたものをちょっと手直しして再録。
想定してない続編が思いつく癖をどうにかしたい。