刀剣乱舞 審神者×同田貫×審神者

※ 創作男審神者注意
※ 『満月の夜』の後日譚です





この審神者は「心臓の鼓動を聞かせる」という触れ合いが大層好きらしい。
お互いにお互いのことが好きだと伝え合って、しばらくぎくしゃくしていた二人の距離感が戻って、否、少しだけ距離が縮まってから、同田貫はそのことを知った。

同田貫が近侍を外れていた間ずっとあった違和感は、審神者も同様に思っていたらしく、近侍としてそばにいるだけで彼はにこーっとだらしない笑みを浮かべていた。
何がそんなに楽しいんだよ、と問えば、お前が隣にいるだけで楽しいんだよ、という不可解な答えが返ってきて、相変わらずよくわからない奴だなという考えを新たにしていた。
すると彼はすっと同田貫の近くまで寄ってきて、おもむろにその手をとって自身の胸に押し当てた。
手のひら全体からばくんばくんと振動が伝わってきてとっさに手を引っ込めようとしたが、さらに強い力で押し当てられる。
「俺さ、お前がこうやって近くにいるだけで、いろんな好きって気持ちで心臓こんなんなってんだ。ずっと聞かせたかった」
そう言って彼が幸せそうに笑うものだから、同田貫は無闇に抗うこともできなくなってしまった。



彼と同じ時間を共に過ごすことで、ひとに好意を寄せることを知った。
彼と離れたことで、ひとを恋い、求めることを知った。
彼に想いを告げたことで、ひとを手に入れる喜びを知った。
それだけで十分だった。それ以上を求めたら自分を構成するものが変わってしまうような気がしていた。

なのになぜこうなった、と同田貫は思う。
審神者の部屋の畳の上で、一部の隙も無く向かい合ってくっついた状態で二人は寝転がっていた。ご丁寧にも腕は胴に巻きつき足は絡められ、容易には離れられなくなっている。別段抵抗する気もないのだが。
もの内番服姿、審神者はかなりくつろげた着流し姿で、つまるところその状態でくっつけば胸と胸が触れ合うようなかっこうになる。
手で触れ合うよりずっと近くで相手の鼓動を感じることに気付いてようやく、彼が何をしたいのか理解した。いきなり突飛なことをしだすのは今に始まったことではないが、それでも一言くらい声をかけてからやれと思う。
今更のことなので言葉にはせずにため息をつけば、息が首にかかってくすぐったかったのか耳元で男がくすくすと笑う声が聞こえて、不意に腹の底で何かが燃え上がったような心地になった。
手持ち無沙汰なまま、されるがままになっているのはいけないような気になって、ひとつ問う。
「俺は何をすればいいんだ」
しかし彼からの答えはつれなく、
「別になにも。こうやって直接心臓の音を聞かせたかったし、聞きたかっただけだからな」
そう言って笑うだけだった。
「はは、正国も心臓ばくばくいってる」
「……悪ィかよ」
「いや?俺と同じでいてくれて嬉しいぞ」
くっついたまま男は満足そうにしているが、同田貫はそう思えなかった。先ほど灯った熱がしきりに何かを訴える。
空腹なときとも、敵を前にしたときとも違う、飢餓感に近いものが腹の奥でぐるぐるととぐろを巻く。
ふと、視界に白い首が映る。いつもなら三寸ほど高い位置にあるそれが、今、目の前で、ほぼ同じ位置にある。
そう認識した瞬間、衝動のままその首に噛み付いていた。
途端、色気のない悲鳴が上がって、肩ごと引き剥がされる。
「なっ…に、してんだよ!」
「何って、見りゃわかんだろ」
気の無い返事をしながら、視線は噛み跡に吸い寄せられる。かなり容赦なく噛んだためにくっきりと赤く残っている。悪かったと思う反面、なんか良いなとも思う心がある。
唾でもつけときゃ直るかと思って噛み跡を舐めあげれば、ひっと息を呑む声が聞こえた。
衝動の赴くまま同じ場所を噛んだり舐めたりしていると、飢餓感が少しだけ和らいだ気がした。
すると、今度は同田貫の首に鋭い痛みが走った。同じことをやり返されたのだと瞬時に理解した。
まずいな、と思う心がある。いいなと高揚する心もある。さっきから矛盾ばかりだ。
武器だった自分が人間に近しくなっていくのを感じる。いや、元からあったものを自分が知らなかっただけだ。すべてはこの男が教えてくれた。

ふと同じタイミングで口を離し、お互いの顔を見る。黒い瞳が熱を持っているのが見える。きっと自分も同じ熱を瞳に宿しているのだろう。
そして一言も言葉を発することなく、お互いの首ではなく唇に唇を寄せた。






諸事情により支部別垢で投稿したもの、その3。
これは頂いたネタを妄想全部盛りしてお送りしております。 
元ネタ氏の語るたぬきはややツン気味男前(攻め寄り)なのでそれを目指してみた。自分で考えるともっと受けくさくなる気がする。