過去拍手・会話小ネタ・短文
クダエメ(微エロ)
上下(シリアス暗め)
エメイン(ほのぼの?)
エメクダ(シリアス暗め)
インノボ(ほのぼの?)



クダエメ

粘着質な水音を残して唇が離れる。お互いの荒い呼吸音が狭い部屋に満ちた。
「クダリ、キス好きなの?」
「うん……今の、気持ち良かった。エメット上手いから」
「ありがと」
「ねえ、もっと」
「ん」
乞われるままに唇を重ね、先程よりもっと激しく互いを求めた。味わうように、融けるように、喰らい喰らわれるように。
クダリが夢中になっている間にさりげなく手を下に滑らせれば、服越しにもごまかしようのないほどにいきりたっている高ぶりが掌に触れた。
「はは、クダリ、こっちも正直」
「好きな人と気持ちいいことしてるんだ、しょうがない」
声音こそ羞恥の色があるが、エメットを見つめる銀の瞳どんな鋭利な刃物よりもぎらついている。普段被っている『好青年』の皮を剥いだ、言葉がやや拙くこらえ性の無いただの男になったクダリの表情が、エメットは好きだった。こうさせるのが自分だけだという自負がより一層愛しさに拍車をかけた。
「エメット、早くいれさせてよ」
「もうちょっとこうしてたいんだけどな」
「がまんできない」
口ばかりの抵抗を無視してクダリはエメットの服に手を掛けた。
「こんな図体のでかい男に欲情するなんて、ほんっとクダリってば――悪趣味」
クダリは一瞬手を止め、片頬を釣り上げるようにニィと笑った。
「そんなのお互い様」
ベルトを緩めスラックスに手を掛けていたクダリの掌は、その下にある硬さに触れていた。
「エメットだってこんなにしてるくせに」
「ばれた?」
「期待してる目、してるもの」
「だったら早く連れてってよ、天国にさ」
「了解」
示し合わせたように片手同士が重なり、絡まる。二人で手を繋いで、どこまでも共に。




お題ったー「「刃物」「悪趣味」「猫かぶり」がテーマのクダエメの話を作ってください」より。
アニクダのつもりで書いてたのに余裕をなくさせたせいでゲークダに見える……
13.12.05





上下
※ アニクダさんが病んでる

クダリは濁った瞳で世界を虚ろに映し、ふらふらとおぼつかない足取りはどこへ向かうかも分からない。引きずったキャリーバッグの大きさが、長期旅行のときのような大きさをしていたのが、より一層ノボリの不安を煽った。
きっとこの瞬間を逃したら、彼をを永遠に失うだろう。たったひとりの家族であり、たったひとりの愛するひとである彼を。そう思わせるだけの儚さが、今のクダリにはあった。

だから、身体ごと抱くに引き止めたのはほとんど衝動だった。触れたら壊れてしまいそうな儚さなのに、渾身の力で抱きしめずにはいられなかった。
「どこへ行こうというのですか」
「ここではない、どこかへ。いかなきゃ」
「何故!」
「兄さんのために……妨げになってしまうから」
「そんなこと、ない!」
叫ぶように否定すれば、強引にでも動こうとしていたクダリの身体がぴたりと止まる。
「わたくしは貴方がいないと息も出来ないのに、それでも行くのですか」
自分でも思いがけないくらいに絞り出したような声が出る。
「愛しています、クダリ。貴方を、貴方だけを……だから……」
嫌われるのが怖くて言えなかった言葉は、形振り構っていられないことになってようやく出た。引き止める為の腕は、すがりつく腕に変わっていた。
「……今の、本当?」
「嘘など言うものですか。貴方を失うくらいなら、私は何だって犠牲にできます」
「そう、そうか……」
硬直していたクダリの身体が膝から崩れ落ちる。衝撃を殺しながらそれを抱き留め、抱き寄せるようにして顔を見れば、虚ろだった瞳に光が戻り雫がこぼれ落ちていた。
「ああ、もう僕は、死んでもいい」
吐息のようなその言葉にノボリは一気に血の気が引いた。
「そんなこと冗談でも言わないでくださいまし!!」
「違うんだよ兄さん、僕は兄さんの言葉で救われたんだ」
ぽろぽろと涙を零しながらクダリはすっと意識を手放し、涙の意図をくみ取れないままノボリの腕に更に重みが加わった。
クダリの寝顔は、幾日も眠れなかったような酷い顔色だったものの、子供のように穏やかで幸せそうな表情をしていた。




お題ったー「ノボクダへのお題は『今なら●●でもいいよ・触れたら壊れてしまいそう・愛で地球は救えなくても僕は救えます』です」より
多分この話の前段階で、ノボリさんが仲良くしてる相手に殺意を覚えたとかなんとかで悩みまくってるクダリちゃんがいたと思うんだけど、冗長すぎた。
ついでに言うと「死んでもいいわ」は英語でいうところの"I love you"ではなく"Yours."(私はあなたのもの)らしいですね。その方が情熱的だと思う。
13.12.06





エメイン


エメットが駅員詰所に着いたのは、インゴと交代する時間だった。本来は引継ぎのためにもう少し早めに来るべきなのだが、ギアステーションに着いて早々に迷子の応対をしていたのだから不可抗力である。
「おはよ。ごめん、ちょっと遅くなった」
詰所に入った瞬間視線が一気に集まり、後ずさった。ここ数日忙しい思いをしてるのは皆同じなのに、一足先に休みを取ったのがそんなに反感を買っただろうか。それとも責められるほど遅刻しただろうか。とっさに部屋の掛け時計と腕のライブキャスターの時間を見比べようとした瞬間、死角から黒くて重い塊が圧し掛かってきた。
「うわっ!えっ何?!……インゴ?」
黒い塊、もとい兄は倒れ込むようにしてエメットに寄り掛かり、エメットの腹に長い腕を回している。プライベートではまだしも、職員の目のある場所でここまで甘えられるのはほとんど初めてだ。先程とは違う意味で刺さる視線が痛い。
「い…インゴ……?おにーちゃーん…?どうしたの?」
「疲れた。眠い。休ませろ」
実に端的な欲求が、インゴの口から素の口調で漏れて驚く。態度は無愛想で口調は慇懃な強くでクールでかっこいい『サブウェイボス・インゴ』の仮面が、激務のせいでふきとばしの憂き目に遭ったらしい。立ったまま半分以上眠った状態のインゴを刺激しないように、一番近くに居た職員に視線のみで問えば、小声で「さっきまでクレーム対応が立て込んでまして」と実に端的な答えが返ってきた。口より先に手が出がちなインゴにとって、クレーム対応は鬼門とも言える苦手分野だ。2人そろっているときはもっぱらエメットが担当していたが、シフトと休暇の関係上インゴが一手に担っていたらしい。
「だったら僕呼べばよかったのに……」
「『久しぶりにとれた休みなんですから、時間まで休ませてやりましょう』って」
「それでインゴが倒れちゃ意味ないのに、――ねえ、インゴ?」
後半のみ兄に問うように言えば、眠りながら唸るような音が聞こえた。
「ちょっとインゴ休ませてくるね。緊急の連絡があったら呼んで」
「了解」

正面に抱え直し、そのまま引きずるように扉の外に出て、エメットは早速へこたれそうになった。インゴの方が筋肉量が多いために、エメットより重い。手持ちの中で一番のパワーファイターであるオノノクスと素手で取っ組み合いができる偉丈夫を持ち上げるほどの体力は、エメットにはなかった。
「インゴ、立って。僕じゃ運べない」
「……無理」
「無理じゃないでしょー、もー」
できないものはしょうがない。件のオノノクスに助けを求めることにした。インゴが抱き着いているせいで見えないが、ベルトにくくられているはずだ。手探りでベルト付近を探せば、くすぐったかったのかインゴの口から息が漏れる。
「…っ、ふっ、んんぅ」
エメットの首筋、耳の近くで聞こえた吐息に煽られ、背筋に痺れが走った。お互い多忙でご無沙汰だったために、情事を想起させるそれは身体に熱を灯すには充分だ。
「もーぉ、誘ってんの?」
否定する仕草も力なく、揺すられた髪がぱさぱさ鳴った。ですよねー、とエメットはひとりごちる。二人の間には『どちらかが疲れ切ってるときに無理強いすることはしない』という紳士協定があるし、それ以前にインゴは意図的に誘うなんて芸当はできない。
すこしばかり落胆と疲弊を感じながらコートと制帽を脱がしつつ、オノノクスのボールを探り当てて赤い閃光を走らせた。
「オノノクス、インゴ仮眠室まで運んであげて」
がう、と応えるように鳴いた彼はインゴを横抱きにしてのしのしと奥に歩いていく。踏み出す足に連動するように揺れるインゴの身体は死体か人形のように力なく、一瞬でもムラッとしたことにエメットは少しばかりの罪悪感を抱いた。




何かの話の前半部分だったはずなのに、職場で素が出るインゴさんと自己嫌悪するエメットくん書いたら満足しちゃった。
まがりなりにも人の命を預かる職業なので紳士協定はあるといいなぁ。
14.01.16





エメクダ
※ 『本気になってしまう前に』のエメットサイド

誰か一人に情熱的に入れあげるなんて、馬鹿のすることだと思っていた。
だって、他人というものはいずれ裏切るものだし、他人に依存すれば依存するほど裏切られたときに痛い目をみるのだから。
子供の頃からそんな厭世的な感覚をボクもインゴも持っていたのは、さすが双子だといったところなのかもしれない。
インゴはその価値観を『誰とも関わらない』という方向で表現し、ボクは『誰とも本気で接しない』という方向で表現していた。ボクたちの違いはそれでしかなかった。ボクに好意を向けた他人を使い捨てにすることに罪悪感なんてなかった。

そう言う風に他人と本気で接することを避けてきたボクが、
「ねえクダリ、ボクとオツキアイしてみる気、ない?」
と言うために要る覚悟は生半可なものではなかった。いつもの軽薄そうな仮面を被ってようやく、というところだった。
他人に依存するなんて馬鹿げていると思いながら、異国の地で出会った同業者(もっと言えば先輩にあたる)に惚れこんで、それまで以上の関係を求めるなんて今までなら考えられないことだった。
だから、その提案の答えが肯定だったことにボクは浮かれきっていたのだ。今まで自分がしたことを思考の範疇外に追いやって。

一緒に出掛ける度に、心がふわふわと浮き立つ。
物陰に隠れてキスをする度に、背徳感で鼓動が高鳴る。
肌を重ねる度に、愛しさで胸を焼かれ、離しがたい執着が一層強くなる。
世間の恋人たちがこれを求めていたのなら、ボクにとってクダリこそが初めての『恋人』だった。
そんな想いに冷や水を浴びせたのは、恋人であるクダリの言葉だった。
「自分だけが君の特別って勘違いしちゃうよ」
勘違いなんかじゃなくてクダリはボクの『特別』なのに、彼は彼自身のことを、ボクが今まで使い捨てにしてきた一人だと考えていた。
その衝撃を言い表す言葉をボクは知らない。絶句としか言いようがなかった。愛しさも執着もボクなりの言葉で表現してきたはずなのに、何一つとして伝わっていなかったのだから。
悪あがきとして訊いた問いにすら想定外の答えを返されて、立っていた場所が不意に崩れ去った感覚に陥った。ボクにとってクダリは最初で唯一の相手だったのに、クダリにとってボクは多数の中の一人だった。
そうなった原因は分かっている。すべてはボクの自業自得だ。軽薄な生き方をしてきたから、軽薄な想いしか返されない。そしてそれでいいと思っていた。クダリに会うまでは。
親友であり恋人であったはずの彼の身体をぎゅうと抱きしめて、血のにじむような想いで語る。
「ボクには君しかいないんだよ。君が居れば何もいらない。大好き。愛してる。クダリ以上に愛せる人なんていやしない」
それは紛れもない本心だった。だけどクダリは悲しげにすら見える苦笑を浮かべ、何も言わず目を閉じてしまった。
「僕もだよ」なんて言葉を期待した自分の愚かさに吐き気がした。

想い合えてるなんて勘違いをさせないで。
嘘ならば「愛してる」なんて言わないで。
全ては今更いってもしょうがない話だ。零れたミルクを嘆いても無駄なのだから。




エメットくんをこんな目にばかり遭わせている気がします。ごめんね!
幸せなの書きたいんだけど、書きかけのエメクダは「クダリから切り出す別れ話」と「エメットが大遅刻してボロ泣きする話」でした。ごめんね!
14.01.16





インノボ
※ 『恋をしましょう』の後日談

インゴと共に下車したノボリが、ぽつりとつぶやく。
「やっぱり夏になってきたんですねえ」
「前からだとは思いますが、どうしました?」
「トレインの座席の横に、これが」
ノボリは手に持っていたもの――ピンクのパラソルを軽く掲げて見せてた。
「ああ、日傘」
「おそらく『パラソルおねえさん』のパラソルです」
「アイデンティティを忘れていったらだめでしょうに」
「そうですねえ」
言いながらノボリは、くるりとパラソルを弄んでから遺失物取扱所に向かった。特に何の用事もないインゴもそれに続く。
「空調の効いた部屋に昼夜問わず居ると季節感とか忘れがちです」
「ワタクシもですよ」
「世間の恋人同士っていうのは、夏は夏祭りだとか花火で盛り上がり、冬はクリスマスだとかバレンタインなんかで盛り上がるものです」
「……?ああ、ここで恋愛指南ですか」
「ええ。ですが、よく考えたら私も男同士は初めてですし、多忙すぎてどうにも上手く指導できている気がしません」
「いえいえ、ノボリさまに教えていただいたことは沢山ありますよ」
慌てて否定すれば、ノボリは身長差のせいで上目遣いになりながらじとりと睨む。
「私インゴさまの朴念仁っぷりをナメておりました。そして、部下の一部やクダリから頂いた『ノボリさんまじ性的』の称号に驕っておりました」
「そんな称号を貰ってらしたのですか」
「それとなく誘ったりなんとなく甘い雰囲気にもっていこうとしたことも何度かあるのですが、インゴ様のスルー能力に全て蹴散らされてしまいました」
「も、申し訳ありません……」
「気にしないでくださいまし。私が修行不足なだけですので」
そう言って苦笑したノボリは、遺失物担当者に向き直って何事か言ってからパラソルを預け、そのまま預所を出る。
「というかですね」
「はい」
「恋人同士のイベントが多い季節になるということは、これからもしばらくは多忙ということでして」
「そうですねえ」
「散髪にも行けない日が続くくらいなのに、デートとかいちゃいちゃとか夢のまた夢なのですよ」
ノボリは両手が空いたことを確かめるように、帽子を小脇に抱えて少し伸びた襟足を無造作に両手でまとめた。露わになった白い首筋が視界に入った瞬間、ノボリの2歩ほど後ろを歩いていたインゴの背筋に奇妙な痺れが走る。
そんなことも知らずノボリは手を離し、うなじが銀髪に再び覆われた。それを残念に思うような心が胸に残り、不思議に思ったインゴはその感情を少しだけ吟味し、言った。
「ノボリさま、ワタクシ、自分で思っていた以上に単純で即物的な人間だったようです」
「へ?どういうことですか?」
「er……um……」
「……?」
「上手く言い表せないので、しばらく時間をください」
「ええ、いくらでもお待ちいたします」
インゴはひとつ息をつき、頭を掻く。罪悪感で心臓がちくりと痛んだ。ノボリの誠意とインゴの感情を擦り合わせるにはまだまだ時間がかかりそうな気がした。




お題ったーの「「首筋」「日傘」「雨垂れ石をも」がテーマのインノボの話を作ってください。」より
pixivで「二人のこれからも読みたい」とコメントいただいたので、続きを想像して書いてみたんだけど、彼らがまともにくっつく気が全然しない……ww
14.01.16